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麻酔管理について

装備

当院では、麻酔はガス麻酔+レスピレーター(人工呼吸器)、麻酔管理は生体管理モニター、体温管理は温水循環ヒーター、また手術室(他にも第一診察室、第二診察室、処置室、X線室)の天井から酸素配管を設備しています。その他、酸素切れのブザーを装備し、より安全な体制になっています。術後に麻酔後に呼吸の悪い場合はICUで酸素、温度、湿度の集中管理もできます。

●当院では、各種手術で麻酔処置を行う場合に生体管理モニターで患畜の麻酔中の状態を管理しています。

(人の麻酔管理では生体管理モニターは必ず使います)
麻酔中は温水循環ヒーターで体温管理を、心疾患、呼吸器疾患がある場合では術前術後にICUでの管理を、また麻酔中に気道分泌液吸引する専用のサクション(吸引器)を用意しています。

●生体管理モニターは、以下の項目を麻酔中にモニターしてより安全に麻酔管理しています。

測定項目:心電図、非観血式血圧(カフ)、動脈血酸素飽和度(SPO2)、体温、呼気と吸気の吸入麻酔薬濃度(AG)、終末呼気炭酸ガス濃度(ETCO2)、心拍数、脈拍数、呼吸数レコーダ
*以前はライフスコープによる心電図と呼吸モニターによる呼吸管理だけでしたが、2001年からは上の項目を麻酔中に管理(生体管理モニター)してより安全に麻酔をモニターしています。
当院では、全身麻酔の時にはパルスオキシメーターとカプノメーターを装着し呼吸器系のモニタリングを行っています。パルスオキシメーターで測定した酸素飽和度をSPO2、カプノメーターでの換気の測定をETCO2と言います。

●動脈血酸素飽和度(SPO2)とは

麻酔中の動物の舌や動脈が走行する部位にプローブカバーを装着し、動脈血中の酸素濃度を画面上で数値として表示します。これによって取りこまれた酸素が、体内でどの程度、吸収されているか把握できます。
*チューブ内の炭酸ガス濃度が正常でも喘息や肺炎や肺水腫などがあると、取りこまれた酸素が吸収されずに、動脈血酸素飽和度が低い場合もあります。よって同時にモニターする必要があります。  
*麻酔中に低酸素状態が続くと脳に異常をきたすことがあり、これも予防しているわけです。

●麻酔ガス(AG)と炭酸ガスのモニター(ETCO2)とは

麻酔器と動物の肺に入れた気管チューブを接続する間にセンサーがあり、麻酔中の動物の呼気と吸気の炭酸ガス濃度と呼気と吸気の麻酔ガス濃度を画面上で数値として表示します。これによって麻酔深度と換気状態を把握できます。
つまり、動物が吸う前(吸気)のチューブ内の麻酔濃度と炭酸ガス濃度、動物が体に吸収した後(呼気)のチューブ内の麻酔濃度と炭酸ガス濃度が数値として分かります。
また、終末呼気炭酸ガス分圧(ETCO2)を測定し動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)を連続的に推定するカプノグラフィーを用いてモニタリングすれば呼吸状態や気道の開通性の情報を得られ麻酔管理がより安全になります。

●各種管理に関して

1.プレッシャータイプのレスピレーター(人工呼吸器)が麻酔器に装着にされているので、呼吸数レコーダが低値になったり、酸素流量を増加させても酸素飽和度が上昇しない場合などでは人工的に補助呼吸することもできます。  
*高齢動物などでは、気管チューブを挿管していても呼吸が弱かったり、(一時的に)呼吸停止する時間が長い場合が稀にあります。よって、麻酔中に人工呼吸器での補助呼吸が必要なケースがあります。

2.温水循環ヒーターを使用して麻酔中の動物の体温を管理しています。麻酔中は麻酔時間が長くなるほど体温は低下します。通常のヒーターを使用した長時間の手術では低温やけどの可能性がありますが、拡散式の温水循環ヒーターではより安全に動物の体温維持管理ができます。麻酔中の体温が適切に維持されていると麻酔からスムーズに覚醒します。

3.心疾患や肺疾患がある犬猫で手術がどうしても必要な場合、麻酔前にICUに数時間入れて酸素化して麻酔導入しています。そのような疾患がある場合には麻酔から覚醒後にもICUに入れて徐々に酸素レベルを下げて通常の空気の酸素濃度に戻しています。

4.ガス麻酔では口から肺まで気管チューブを挿管して酸素と麻酔ガスを流して麻酔を維持します。小型犬種や猫では使用する気管チューブは細く、稀にチューブ内に分泌液が入り込むケースがあるので気道の分泌液を吸引する器具(フレームノーバサクションポンプ)が必要なケースがあるので準備しています。
*マスク法での麻酔管理では、舌が気道を閉鎖するケースがあり(特に短頭種)長時間の手術では全ての症例でチューブを口から肺まで挿管して麻酔管理しています。

●麻酔前の検査の必要性

何らかの疾患で麻酔をかける場合、麻酔処置の前には、症状・状態・年齢により血液検査(血球、生化学)、レントゲン検査をします。重症の場合や症状によって、電解質や血液ガスを測定して酸塩基平衡から点滴液を選択します。