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2003年度医療器具導入

ICU装置、酸素濃縮器、スリットランプ

サム動物病院では的確な診断の一助として、毎年、医療設備の充実に力を入れています。

2003年度、ポータブルスリットランプ導入しました。ICU装置と酸素濃縮器を6月に導入しました。

●小動物用ICU装置

ICUとは、呼吸器系や循環器系または各種手術後の回復期に室温、湿度、酸素濃度を調節できる治療設備を言います。

例えば、重度な肺炎、気管支炎、気胸、肺挫傷、気管虚脱、軟口蓋過長などの呼吸器疾患。または重度な僧房弁閉鎖不全症や心筋症などの心疾患から循環不全による二次的な肺水腫に陥り低酸素状態のものではICUにより適切な酸素供給が必要な場合があります。

人間では、経鼻チューブや酸素マスクで容易に管理できますが、動物では意識レベルが弱いか、よっぽど温和な性格でないかぎり難しい場合が多いです。

使用頻度が一番多いのは、心臓病における呼吸困難です。心臓病があることによって血液の循環不全が起き、とくに左心臓が悪い僧帽弁閉鎖不全症では左心房内でうっ血が起こり肺静脈高血圧から肺水腫になり肺でガス交換ができず呼吸困難になります。一時的な呼吸困難を乗り切れば延命(良くなるわけではなく薬でコントトロール)できるケースもありICUは非常に外来診察の場合でも重宝しています。

最近では犬猫ともに高齢化子傾向があり、かなりの高齢で手術が必要な場合もあります。そのような場合、手術前後にICUで温度、湿度、酸素を管理すると病態の回復には良いでしょう。

その他、夏場の熱射病、冬場の低体温症にも使用できます。また、呼吸器疾患や循環器疾患で確定診断のためどうしてもレントゲン検査、血液検査が必要な場合に呼吸が安定していない状態で無理に検査を強行すると低酸素症から危険が生じます。そのような場合に数時間ICUに入れてある程度呼吸が安定してから検査をすると検査時のリスクが軽減します。また、交通事故で肺内出血やショック状態などでも使用しています。

温度調節範囲 17~38℃(周囲温度25℃の場合)
湿度調節範囲 40~70%(周囲湿度20~80%の場合)
酸素濃度調節 25~40%(毎分5リットル酸素供給時)

*ICU内の酸素濃度が長時間40%以上になると肺は虚脱して酸素中毒になるので最大で40%までにしなければなりません

●小動物用酸素濃縮器

通常は小動物用ICU装置と連結して使用します。この酸素濃縮器は、毎分5リットルの高流量の酸素を供給します。酸素配管から酸素を使用するとコストがかかりますが、これでは電気代しかかかりませんので、思う存分に酸素を使用できます。
一般に健康器具の酸素濃縮器がありますが、これは医療用の小動物用酸素濃縮器です。ICUと同じメーカーから発売されているので安全性もしっかりしています。

酸素濃度90±3%以上 

●ポータブルスリットランプ

スリットランプは眼を視覚的に縦に分断して、角膜、前房、水晶体などを観察するものです。光の光源を調節したり、光を細い線や太い線や大きさの違う球形にしたりして各種眼やその周りの眼瞼や異所性睫毛などを確認します。このポータブルスリットランプは主に角膜を中心にした検査になります。

●その他

開業12年経過のため、院内の天井埋め込み型エアコンの一部を新しい業務用エアコンに交換しました。
(待合室、受付、手術室、処置室、スタッフルーム、トリミング室)